今日の一言 2026-02-10 (火) ~ 2026-02-11 (水)

道場長の一日一心 " ​【古を歩く】 伝説の武将が歩いた道。 綱の手引坂 編 "

今朝目覚めることができた。

ありがとう。

 

 

 

本日は、二十四節氣

立春(りっしゅん)次候

 

七十二候

第ニ候 黄鴬睍睆(うぐいすなく)

2月9日~13日ごろ。

春告鳥(はるつげどり)とも呼ばれる

ウグイスが、春の到来を告げるように

山里で鳴き始めるころ。

 

 

 

 

 

今日の " 道場長の一日一心 "

​『 ​​​【いにしえ を あるく】 でんせつ の ぶしょう が あるい た みち。 つなのてびきざか  へん 』

 

 

 

 

 

※前回の記事はコチラ

 

さて、お正月の東京出張

坂道巡りの続きです。

 

 

東京という街は、

コンクリートのジャングルの

ように見えて、

 

一歩路地に入ると

江戸の骨格が

 

そのまま

残っていることに驚かされます。

 

 

 

​以前から、

私がどうしても訪れたかった場所。

 

 

 

それが

港区三田 (みた) にある

 

「綱の手引坂(つなのてびきざか)」です。

 

 

​地下鉄都営三田線三田駅、

JR田町駅から徒歩約3分ほど、

 

港区三田一丁目四と

二丁目六の間にある坂道です。

 

 

 

平安時代の勇猛な武将、

源頼光の四天王の一人である

 

「渡辺綱(わたなべのつな)」

由来するこの坂。

 

 

 

渡辺綱は

鬼の腕を切り落としたなど、

 

英雄伝説として

名を残した武将ですね。

 

 

 

この「綱の手引坂」という

ユニークでインパクトのある

坂名の由来は、

 

彼がこの地で生まれ、

幼少の綱が、

 

姥に手を引かれて

この坂を行き来したことから

名付けられたとか。

 

また「姥坂(うばざか)」と

呼ばれていたという説もあります。

 

 

 

大都会 東京の真ん中、

オーストラリア大使館、

綱町三井倶楽部の道沿いに

ひっそりと佇むこの坂道。

 

 

 

 

一歩足を踏み入れると、

そこだけ空氣が

凪 (な) いでいるような、

不思議な静けさがありました。

 

 

 

その静かな坂道を

ただ景色を眺めて

歩くのではありません。

 

 

 

 

かつて

この急坂 (きゅうはん) を、

 

踏みしめた

人々の身体感覚を想像するのです。

 

 

 

現代の私たちが履く靴は、

特に指先に意識を置かなくても

脱げることはありません。

 

 

 

しかし、

その結果、

 

私たちの姿勢が

踵よりの不安定な姿勢を

 

作り出した原因でもあると、

私は思っています。

 

 

 

 

 

話を元に戻すと、

 

当時の

雪駄や下駄、

草鞋といった履物は

 

常に指先に意識がなければ

簡単に脱げてしまう。

 

 

 

おそらく、

臍下の一点を据え、

重力に逆らわず、

 

全身の重みが

自然と軽く母趾球にかかり

大地を踏みしめていたはず。

 

 

 

 

そして何より、

この「手引き」という名前。

 

 

 

 

これこそ、

人生にも合氣道にも通じる

極意ではないかと感じ入りました。

 

 

 

 

​馬であれ、鬼であれ、

何かを「引く」時。

 

力任せに引っ張れば、

相手は抵抗し、綱は切れます。

 

 

 

相手の心を感じ、

氣を合わせ、

 

抵抗させないように

導くことで

 

はじめて、

重いものも動かすことができる。

 

 

 

まさに「導き」です。

 

 

 

 

 

そんなことを考えながら、

私たちがこの急坂を下っていた、

ちょうどその時のことです。

 

 

 

​一台の自転車が

風のように私たちを追い抜き、

坂を下っていきました。

 

 

お母さんです。

 

続いて、

小学低学年くらいの男の子が、

 

小さな自転車で

一生懸命に後を追っていきます。

 

 

 

​先を行くお母さんは、

坂の下まで降りきったところで

自転車を止め、

 

振り返って

じっとお子さんを待っていました。

 

 

 

やがて

追いついた少年と、

 

ふたこと三こと、

言葉を交わす二人。

 

 

 

 

お母さんの眼差しが、

見えない糸で

少年をふわりと引き寄せ、

 

安全な場所へと導いた、

そんな温かな光景でした。

 

 

 

 

 

二人はまた軽やかに、

ペダルを漕いで

走り去っていきました。

 

 

 

​その

あまりに自然な阿吽の呼吸。

 

 

 

 

隣で

案内をしてくれていたお弟子さんと、

思わず顔を見合わせました。

 

 

 

「まるで、姥(うば)が幼い綱の手を引いているようですね…」

 

 

 

一千年の時を超え、

目の前の親子の姿が、

 

この坂の名の由来と

完全にリンクした瞬間でした。

 

 

 

 

形は見えずとも、

そこには確かな

「手引き (導き) 」があった。

 

 

 

 

古の伝説が、

現代の日常の中にふと蘇る。

 

 

その不思議な巡り合わせに、

私たちは静かな感動を

覚えずにはいられませんでした。

 

 

 

 

​何百年、何千年も前の

武将、侍、庶民が、

 

この坂で何を感じ、

どう「心と身体」を使っていたのか。

 

 

 

 

石垣の苔や、風、

場に流れる氣、

足裏から伝わる地面の凹凸。

 

 

 

そういった情報

すべてを五感で受け止めること。

​感性を磨くこと。

 

 

 

​道場の畳やマットの上だけが

稽古場ではありません。

 

 

 

 

歴史ある坂道を歩き、

先人の息吹に

耳を澄ませることもまた、

 

合氣の心を養う

大切な時間なのだと、

この坂は教えてくれました。

 

 

 

皆さんも、

近くにある「古」を探して

歩いてみてはいかがでしょうか。

 

 

きっと、

新しい感性が開くはずですよ。

 

 

 

 

 

 

さて、

次はどの坂が、

私たちを待っているのでしょうか。

 

 

 

 

​古の江戸を歩く旅、

まだまだ続きます。

 

 

 

 

​過去の坂巡りのエントリーはコチラから

↓↓↓

雁木坂 中坂 檜坂 狸坂 冬青木坂

七面坂 二合半坂 狸穴坂 乃木坂

大黒坂 鳥居坂 一口坂 本氷川坂

芋洗坂 饂飩坂 永坂 於多福坂 鼠坂

植木坂 日向坂 神明坂

 

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

兵庫県合氣道連盟

合氣道琴心館寺崎道場

道場長 拝