今日の一言 2025-12-30 (火)
道場長の一日一心 " 喧騒なき京都で愛弟子と交わした「氣」の対話 "
今朝も目覚めることができた。
ありがとう。
本日は、二十四節氣
冬至【とうじ】次候
七十二候
第六十五候 麋角解(さわしかのつのおつる)
12月26日~30日ごろ。
雄の鹿の角が落ちるころ。
今日の " 道場長の一日一心 "
『 けんそう な き きょうと で まなでし と かわ し た「き」の たいわ 』
新年を迎えるにあたり、
今年は例年になく
入念に家の大掃除を行いました。
道場だけでなく、
自宅の隅々まで埃を払い、
場を清める。
今朝からは、
歳神様をお迎えするための
準備を整えています。
自分の部屋も
模様替えを済ませました。
不思議なもので、
配置を少し
変えるだけで「氣」の流れが変わり、
心まで
澄み渡っていくのを感じます。
氣持ちも新たに、
清々しい新年を迎えられそうです。
みなさまは、
どのような
年の瀬をお過ごしでしょうか?
さて、
そんな大掃除の時間を過ごす少し前、
私は京都を訪れていました。
二ヶ月に一度の恒例、
ご先祖様の永代経読経で
西本願寺へ参拝するためです。
何かと
忙しかった11月を乗り越え、
まだ紅葉が残る
12月初めには行きたかったのですが、
近年の京都は
どこへ行っても人、人、人…
「いつ行こうか?」と迷っていたころ、
合氣道寺崎道場 師範部長である
中島さんからLINEが入りました。
「寺崎先生、
クリスマス明けに仕事で京都へ参ります。
もしご都合がよろしければ、
お食事でも
ご一緒させていただきたく存じます」
彼女は東京で
恵比寿教室を主宰する道場長であり、
神奈川も含めた
四つの道場と教室、
そこで指導にあたる
10名の指導者とそれを目指す者、
さらには、約50名の
門下生を束ねる師範部長でもあります。
私とは
もう40年以上の付き合いになりますが、
私の目指す道を
誰よりも深く理解し、
手となり足となって
道場を支えてくれる。
私にとっては
単なる弟子という枠を超えた、
背中を預けられる
かけがえのない
「良き片腕」とも呼べる存在です " 。
私は神戸、
彼女は東京。
物理的な距離に加え、
年明けには
私が東京へ出張する予定があるものの、
そこでは
多くのお弟子さんたちの
指導に追われることになります。
二人でじっくりと
膝を突き合わせて
話す時間はなかなか取れません。
だからこそ、
今回の中島さんからのお誘いは
絶好の機会でした。
待ち合わせは、
「スターバックス 京都烏丸六角店」。
聖徳太子建立と伝わる
「六角堂」に隣接し、
ガラス窓から
御堂を間近に望める
京都屈指のロケーションです。
店に着くと、
彼女はすでに席に座っていました。
その後ろ姿からは、
凛とした上品な「佇まい」がうかがえます。
実はこの日本女子、
合氣道を始めるずっとずっと前
10代から20代まで
映画やドラマ、
テレビ番組の司会といった
芸能界の仕事をしていました。
(それ以上は彼女に強く口止めをされているため詳しくは話せませんが😅)
「常に人から見られる世界」に身を置いていた経験。
それは、
指先の角度一つ、
視線の配り方一つで
相手にどう映るかという、
極限まで研ぎ澄まされた
身体意識を彼女に植え付けました。
さらに、
数々の台本を読み込み、
役柄の感情を
咀嚼(そしゃく)してきた経験と、
生放送の司会で
培った瞬発力のある言語化能力。
それらが
今の彼女の、
的確で心に響く
指導力=「語彙力と表現力」の
源泉となっています。
合氣道で練り上げた「氣」と、
芸能界で磨いた「魅せる力」。
その二つが融合し、
あの「美しい佇まい」が作られているのでしょう。
店を出て、
私たちは先斗町へと向かいました。
クリスマスが過ぎた年末の京都は、
嘘のように人が少なく静かでした。
あれほど多かった
中国からの観光客も、
今はほとんど見かけません。
かつて社会問題とまで言われた
「オーバーツーリズム」は幻だったのか?と
錯覚するほどです。
さすがに
四条河原町界隈は
外国の方々で溢れていましたが、
それでも
身動きが取れないほどの
春や秋とは大違いです。
この時期は、
本来の京都の風情を味わいながら
歩くことができる
貴重な季節なのかもしれませんね。
並んで歩いていると、
ふと彼女が口を開きました。
「先生、こんなに空いているなら、
どうせなら一日、二日早めて
賑やかなクリスマスに来れば良かったかな?」
そう言った直後、
彼女は自分でハッとしたように
悪戯っぽく微笑み、こう続けました。
「……あ、いえいえ。
クリスマスの京都だなんて、
私たちにはあまりにも『青春』過ぎますね(笑)」
その絶妙な
一人ツッコミに、
私も思わず声を上げて笑ってしまいました。
しかし、
この静けさは贅沢です。
石畳を打つ靴音、
鴨川を渡る風の音、
時折ちらつく細雪…
古都が本来持っている
息遣いが肌で感じられる。
「やっぱり、京都はこうでなくちゃ」と
改めて思います。
日が暮れた先斗町、
彼女がとっておきだと語る
京料理店の暖簾をくぐりました。
鴨川を望む席で、
繊細な懐石料理と
種類豊富な日本酒に舌鼓を打ちながら、
話題は
自然と深いところへ及びます。
40年前の昔話や
道場運営の話はもちろんのこと、
彼女の口から出るのは、
日本の教育、
精神性、
そして
この国の未来への強い危機感です。
彼女は
未来の日本の在り方を
真剣に考え、
憂い、
そして
自分たちに何ができるかを
模索する「国士」でもあります。
「合氣道を通じて、
日本人が失ってきた
芯を取り戻したいんです」
その眼差しは、
かつての女優のそれでもなく、
ただの指導者のものでもなく、
確固たる志を持った
一人の日本人としての
土台を湛(たた)えていました。
静寂の京都で、
美味しい料理と酒、
そして
最も信頼する愛弟子との語らい。
新たな年を迎える前に、
互いの魂が共鳴するような
熱い時間を過ごせたことに感謝しつつ、
私も心新たに新年を迎えたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
兵庫県合氣道連盟
合氣道琴心館寺崎道場
道場長 拝